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広告主、メディア、消費者の3者揃ってwin-win-win、そのような理想的なネイティブ広告とは

 広告を掲載するメディア提供者、マーケターとしての広告主、ユーザーである消費者。それら3者すべてが満足できるようなネイティブ広告を実現するのは、簡単でありません。でもニュース・アグリゲーターの「Techmeme」は、かなり理想に近いネイティブ広告を具現しているのではないでしょうか。

 

 Techmemeはインターネット関連テック系ニュースのアグリゲーターとして人気の高いサイトです。シリコンバレーの企業やVCのキーパーソンの多くが閲覧していると言われているように、インターネット関連ビジネスに深く携わっている者にとっていつも目を通しておかなければならないニュースサイトとなっています。

 

 新聞や雑誌、TVなどの伝統的マスメディアのニュースサイトや、新興のオンラインニュースサイト、それにブログなどから、ネット業界人にとって重要と思われるニュース記事を選りすぐり、その見出しや要約を次々と更新しながら掲載していくアグリゲーターです。自動的なシステムによるニュース選出だけに頼るのではなくて、専任の編集スタッフを配し、人手によるニュース選出や重要性に応じた最適配置も実施しており、そのお蔭で質の高いニュースサイトに仕上がっています。

 

 Techmemeの中核読者は、一般の幅広いネットユーザーではなくて、ネット関連ビジネスに実際に携わっている人達です。このためBtoB向けの堅いニュースサイトとなっており、月間ユニークユーザー数をあまり獲得できないでしょう。またオリジナルコンテンツを持たないアグリゲーターなので有料課金化も難しいでしょう。そうなるとやはり広告収入に頼らなければならないのですが、ユーザー数をあまり多く確保できないとなると、料金体系がページビュー依存の広告でやっていくのは厳しいです。

 

 にもかかわらず2005年に設立した同サイトが、淘汰を繰り返すニュース市場で約9年間も生き続けることができたのは、どうしてでしょうか。サイトがスタートして間もない1年後に、つまり2006年に早々とネイティブ広告の類を手掛けていたことが効いたのです。スポンサー(広告主)が投稿できる枠として、スポンサード・ボックスをサイドバーに設けたのです。

 

 広告主の顔ぶれは、新しいサービスや製品を頻繁に提供しているネット企業でした。そのようなネット企業は一般に、公式の企業(ブランド)ブログを介して新サービスや新製品、自社技術の発信に力を入れていました。こうしたブログは、Techmemeの読者にとって有益な情報源となることが多いのです。そのためTechmemeの編集にとっても、皆が注目している有力ネット企業の公式ブログは、アグリゲート対象のニュースソースとなっています。ただ、企業からするとブランドブログのニュースがTechmemeに掲載されるかどうかは分からないし、たとえ選ばれたとしても掲載期間は1日間くらいで終わってしまいます。でも広告料を払ってスポンサード・ボックスを確保すれば、確実に企業ブログのニュースを告知できます。掲載期間も長くできます。スポンサード・ボックスの料金は、2006年当時でも3000ドル~4500ドルでしたから、結構高い広告料でした。

 

 最近のTechmemeページを覗いてみると、図1のように、スポンサード・ボックスの流れを受け継いだスポンサー・ポスト(Aの"Sponsor Posts")枠が用意されていました。それに加え、求人リンク(Bの"Who's Hiring"Links)枠とイベント・リスト(Cの"Upcoming Tech Events")枠も、サイドバーに置かれています。Techmemeの読者のようなネット業界人にすれば、業界の重要な求人情報やイベント情報もいつもチェックしておきたいはずです。一方で、求人企業やイベント主催者にすれば、ネット業界のキーパーソンが多く閲覧しているTechmemeとなると、優先して告知したくなるのも頷けます。こうしたA、B、Cの3つの枠を定位置に常設し、広告主のコンテンツを告知できるようにしたのです。

 

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図1  Techmemeページ  目障りなバナー広告は存在しない

 

 右サイドバーの最上段にあるスポンサー・ポスト枠(A)を拡大表示すると、次のようになります。現在、MicrosoftやAmazonなどの5社が広告主となっています。敬遠されがちな広告ではなくて、解説風ブログ記事への誘導枠になっています。

 

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図2 スポンサー・ポスト枠

 

 読者がいつも目にする中央欄(ページ左枠のニュース掲載スペース)にも、広告主の誘導枠がローテーションで挿入され掲載されています。図1のA1がそれです。この例ではアマゾンからのコンテンツが表示されています。その部分を拡大すると、次のようになります。

 

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図3 ニュース掲載スペース内に置かれたスポンサー・ポスト

 

 これはまさにインフィード型のネイティブ広告です。背景を薄青色に配色し、企業ロゴと表記(RECENT SPONSOR POST)もはっきり分かるように示しているので、広告であることの明示性は合格でしょう。それに、リンク先のコンテンツがブランド・ブログ記事なので、読者の反発を受けないはずです。またニュース掲載スペース内にはスポンサー・ポストを1本しか挿入しないので、メディアコンテンツを邪魔することはほとんどないでしょう。

 

 右サイドバーに置いた求人リンク枠(B)も、以下の図のように勢いのある企業が利用し、自社の求人ページに読者を誘導させています。FacebookやGoogleのような超有力企業も使っているのは、いつも優秀な人材を求めていることをネット業界のキーパーソンにアピールしておきたいからでしょう。ただ誰もが求人リンク枠の広告主になれるのではなくて、Techmemeがサイトにふさわしい求人企業を選んでいるようです。

 

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図4 求人リンク枠

 

 右サイドバー下のイベント・リスト枠は、年末は技術イベントのオフシーズンなのか、以下のようにイベント数はやや少なくなっています。ここでは米国内、および海外の主要テックイベントの一覧表をTechmemeがまとめて提供していますが、企業も有償でイベント案内を掲載できるようになっています。特にネット企業の多くは開発会議などの単独イベントを頻繁に実施しているので、その告知にはこのリスト枠は欠かせないでしょう。リスト枠内の下の”View all events“をクリックすると、Techmemeスタッフが編集したイベント一覧表が表示されます。有償で掲載依頼のあるイベントだけでなくても、読者にとって重要と思われるイベントも含まれているのです。

 

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図5 イベント・リスト枠

 

 広告料金は、Aのスポンサー・ポスト枠が掲載位置によって1か月7000ドルから1万7000ドルまでとなっています。Bの求人リンク枠とCのイベント・リスト枠は、どちらも1件あたり2900ドルからとなっています。

 

 この広告料を払って掲載する有償コンテンツ(誘導リンク)は、多くの読者が注目しているネット企業のブログ記事や求人情報、イベント情報であり、広告ながらTechmemeの編集コンテンツとして見なせるレベルのものと言えそうです。このように企業が提供する有償コンテンツでも、読者にとって役に立つものに絞り込めているのは、Techmemeが強い立場の信頼できるメディアサイトになっているからでしょう。

 

 多くの読者を獲得して広告売上高を大きく伸ばすことよりも、ネット業界のキーパーソンがいつもチェックしなければならない質の高いニュースアグリゲーターに育て上げることに、同サイトの設立者のGabe Rivera氏は注力してきました。これだけ高い評価を得てネット業界での影響力を増してくると、当然のようにVCがすり寄ってきているはずです。Business Insiderとのインタビューに対し、Rivera氏は「多くのVCから出資の話があったが、これまですべて断ってきた」と答えています。このため、無理して広告売上を増やそうとせず、スタッフや自分の給与を払うだけの利益を生み出せば十分だとのことです。また広告主となる有力なネット企業にとっても、ネット業界の質の高い読者にリーチできるTechmemeは、ブランド向上のための貴重な広告メディアになっているのです。

 

 質の高い読者となると、FacebookのZuckerberg氏もその一人です。彼がNYタイムズ以外で最も好きなメディアはTechmemeであると絶賛するように、ネット業界の多くのキーパーソンにとってお気に入りのニュースサイトとなっています。そのせいかFacebookもよく同サイトの広告主になっています。それでも、同サイトのトップ位置に、「若者離れが進むFacebook」のようなFacebookにとって有難くないニュースがよく掲載されています。このように、ネット業界の読者、それに彼らが属するネット企業にとって重要とされるニュースをキュレーションしているTechmemeは、広告掲載においても読者や企業とって役立つ形で実現していると言えそうです。

 

◇参考

Techmeme’s Sponsorship Blog Ads(ConversionRater)

How Techmeme Became The Must-Read News Site For Everyone In The Multibillion-Dollar Tech Industry (Business Insider)

12 Surprising Things That Mark Zuckerberg 'Likes' (Business Insider)

 

 

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