NYタイムズのネイティブ広告、編集記事と比べても見劣りしない出来栄え

編集と広告の棲み分けに配慮

 NYタイムズのPaid Postは、同社内に設けた専門のコンテンツスタジオ「T Brand Studio」が広告主のブランドと協力しながら制作しています。この制作には、新聞編集のニュースルームは一切関与しないことになっています。つまりNYタイムズの編集の独立性を堅持していると主張しているのです。

 

 一昨年前まで社内でも、これまで編集記事が配されていたスペースに広告主からのコンテンツを割り込ませていく形の「ネイティブ広告」に否定的な立場をとる人が少なくなかったのです。外部からも、高級新聞たるNYタイムズは避けるべきだという声が多く聞かれました。それだけに社としても、編集と広告の役割分担を明確にしておきたかったのでしょう。でもNYタイムズサイト内で、もともと編集コンテンツが配される聖地にネイティブ広告が置かれるようになるのですから、読者からの反発が心配です。メディアの信頼性を毀損させないためにも、ネイティブ広告のコンテンツでも編集コンテンツと比べても見劣らない質に高めたかったのです。

 

 そこでネイティブ広告専門のコンテンツスタジオ「T Brand Studio」を設立したのです。優秀な専任スタッフを集めて、ストーリー展開の面白さで読者を引きつけるコンテンツを企画し制作できる体制を整えたのでした。専任スタッフ数は昨年中ごろまで16人であったのが、最近では倍以上の35人に増強しています。10万ページビューを達成するネイティブ広告コンテンツも生み出したということですから、それなりの支持を受け成果を上げているようです。

 

 NYタイムズのネイティブ広告コンテンツは、ブランド(広告主)からの注文を受けてT Brand Studioが制作することになっています。つまり特注品です。原則として、そのコンテンツはNYタイムズのサイトにしか置かれません。ブランド側にとってNYタイムズのネイティブ広告コンテンツは非常に価値あるものになるはずです。所望のメッセージ性の高い作品をNYタイムズが独自に制作してくれ、それを天下のNYタイムズの編集スタイルのページに置いてもらえるからです。

 

 ただNYタイムズとしては、メディアの貴重なスペースが、メディア編集スタッフの関与しないコンテンツによって浸食されているという印象を与えたくないのです。そのあたりは、NYタイムズも気を配っています。特に、サイトの顔であるトップページは編集記事の目次ページに相当するだけに、そこでどのようにネイティブ広告に誘導しているかが気になります。トップページを何度か繰り返しチェックしたのですが、ネイティブ広告の存在が目障りであるとの印象は受けませんでした。ネイティブ広告への誘導を極力割り込ませないように努めているようです。

 

 昨日から頻繁にトップページを見ているのですが、稀にCathay Pacificのネイティブ広告コンテンツへの誘導枠が現れてきていました。トップページの真ん中あたりにINSIDE NYTIMES.COMと称するスクロール枠(図6参照)がありますが、そこではいつもお薦めの編集記事を紹介しています。その中にたまたまPaid Postのコンテンツへの誘導が現れたのですが、ほとんど気になりませんでした。

 

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図5 トップページからの誘導例(その1)。INSIDE NYTIMES.COMと称するスクロール枠では、通常は12本の編集記事を紹介していますが、まれに1本だけPaid Postを紹介することがありました。

 

 またトップページの下段部分に、カテゴリー別に編集記事見出しを紹介する枠があるのですが、ネイティブ広告を紹介することは一度も見かけませんでした。ただ時たま、図6のように右側のサイドバーにネイティブ広告を紹介する広告枠が出ることがありましたが、これも編集枠と混在していないため、紛らわしさは感じませんでした。

 

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図6 トップページからの誘導例(その2)

 

 また、NYタイムズのメディア編集のために運用しているフェイスブックの公式ページツイッターの公式アカウントにおいても、ネイティブ広告コンテンツへのリンク誘導を行っていませんでした。つまりメディア編集側は広告事業に関わらないようにしており、ネイティブ広告の後押しを認めていないようです。逆に、メディア編集から独立しているT Brand Studioは、独自のフェイスブック・ページツイッター・アカウントを設け、そこからネイティブ広告コンテンツを紹介しています。

 

 NYタイムズのネイティブ広告ともなると、話題になるコンテンツが多いため、第3者のソーシャルメディアや検索エンジンでの露出が目立ち広く拡散しているようです。たとえば図7に示すように、「The Imitation Game」のネイティブ広告は、T Brand Studioに加えエグニマ博物館のフェイスブック・ページにも紹介されていました。

 

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図7 フェイスブック・ページからの誘導。左はT Brand Studioのページ、右はエニグマ博物館のページ。

 

 

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